コロナ後遺症とアセチルコリンの関与について
大阪府茨木市のみつだクリニックです。
GW連休明けの5月8日から新型コロナウイルス感染症が5類感染症となります。
新規感染者数の減少に伴い、今後は後遺症の問題に注目が集まっていくものと思われます。
新型コロナウイルスに感染後、倦怠(けんたい)感と「うつ」の症状がある後遺症患者の治療について、認知症の薬(ドネペジル)の有効性を調べる治験が始まっているそうです。
「ドネペジル」という薬は脳内の神経伝達物質「アセチルコリン」を増やす働きがあります。これまでも認知症の際の健忘症状の治療に使用され、また、ぼんやりとするといった、せん妄状態に有効であることは示唆されてきました。
また、マウスの実験ではアセチルコリンが減ると、コロナ後遺症の倦怠感やうつの症状が現れることが分かっていますが、ドネペジルの投与で改善につながったことから今回の治験が開始される経緯になったようです。
脳内のアセチルコリンは、目覚めさせる(覚醒)作用や活力を上げる(賦活)作用を持ち、重要な神経伝達物質(神経細胞の突起先端部のシナプス部で放出されて、次の神経細胞に情報を届ける重要な役目を持つ物質)ですので、新型コロナウイルスの後遺症の精神症状に対して有効である可能性は充分あるとは思われます(まだ治験段階なので確定的なことは言えませんが)。
また、COVID-19感染症の重症化予防に抗うつ薬フルボキサミンが有効であると示唆する論文もあったりしますが(JAMA誌2020年12月8日号など)、どうやら初期・早期であるほど有効であるようで、後遺症に対する有効性に関してはよくわかっていません。
ともかく、お困りの方が一人でも多く助かることを願ってやみません。
まだ治療法がはっきり確立しているものではありませんが、今後も最新の情報収集に努めたいと思います。
2023.4.15.