冬季うつ病の症状チェックリスト|冬に気分が落ち込む原因とは?
「冬の朝、布団から出るのがつらい」「日中、だるくて何もやる気が起きない」「夏は元気だったのに、冬になったら仕事に行けなくなった」…こんな症状が続いているなら、冬季うつ病の可能性があります。
冬季うつ病とは、文字通り冬に特有の症状が現れるうつ病の一種です。気分の落ち込みだけでなく、身体の不調が現れることもあります。
また、冬季うつ病は、再発しやすく慢性化しやすい病気であるため、早期発見・早期治療が重要です。
今回は、冬季うつ病の症状や原因、なりやすい人の特徴、治療法などについて詳しく解説します。この記事を通して、冬季うつ病への理解を深め、適切な対応につなげていきましょう。
冬季うつ病とは?
冬季うつ病は、正式には季節性感情障害(SAD:Seasonal Affective Disorder)と呼ばれ、季節の変化に伴って気分が落ち込んだり、意欲が低下したりする症状が現れる病気です。季節性感情障害には、冬季に症状が現れる「冬季型」と、夏季に症状が現れる「夏季型」があります。日本では冬季型が圧倒的に多く、冬季うつ病と呼ばれることも一般的です。
また、冬季うつ病は、再発しやすい病気でもあります。毎年同じ時期に症状が現れることが多く、症状が軽度であっても、生活に支障が出る場合は治療が必要です。
次の章では、冬季うつ病の具体的な症状について詳しく説明しますので、ご自身の状態と照らし合わせてチェックしてみてください。
冬季うつ病の治し方については以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
『冬季うつ病の治し方|自分でできる対処法や治療法を紹介』
冬季うつ病の症状チェックリスト
冬季うつ病の代表的な症状として、以下のようなものが挙げられます。
- 強い疲労感、倦怠感がある
- 過食してしまう
- 寝ても寝ても眠い
- 気分の落ち込みがある
それぞれの症状について詳しくみていきましょう。
強い疲労感、倦怠感がある
冬季うつ病の代表的な症状の一つに、強い疲労感や倦怠感があります。
朝起きるのがつらい、体が重だるい、何もする気力が起きないといった症状が現れます。最低限の仕事や日常的な動作にも疲れてしまい、休んでもなかなか回復しないのが特徴です。
過食してしまう
冬季うつ病では、炭水化物や甘いものを無性に食べたくなることがあります。これは、セロトニンが不足し、食べることで気分を上げようとするためと考えられています。一時的に気分が良くなることもありますが、すぐにまた落ち込み、さらに過食してしまうという悪循環に陥りがちです。過食は体重増加や健康への悪影響を招くこともあります。
寝ても寝ても眠い
冬季うつ病の代表的な症状の一つに、過眠があります。「寝ても寝ても眠い」という感覚が続く場合は、冬季うつ病のサインかもしれません。
冬季うつ病の場合は、毎日10時間以上の睡眠をとっているのに朝起きるのがとてもつらい、日中に強い眠気を感じるなどの症状が現れやすいです。
気分の落ち込みがある
冬季うつ病では、気分が沈み、普段楽しんでいた趣味や活動への意欲が湧かなくなることが特徴的です。無気力な状態が続くため、仕事や学業のパフォーマンスが低下したり、人間関係に影響が出たりすることもあるでしょう。
気分の落ち込みの程度は人によって異なり、軽い憂鬱感から強い絶望感まで幅があります。日中ずっと気分が沈んでいる場合もあれば、時間帯によって気分が変動することもあります。さらに、イライラしやすくなったり、不安感が強まったりすることがあり、些細なことで感情的になりやすく、周囲との衝突が増えることもあるため注意が必要です。
このような気分の落ち込みが冬季に集中し、春や夏には回復する場合、冬季うつ病の可能性が考えられます。
冬季うつ病の原因
冬季うつ病の発症には、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられています。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 日照時間の減少とセロトニン分泌の低下
- メラトニン分泌リズムの乱れ
- 体内時計のずれ
- 遺伝的要因・生活習慣の影響
それぞれの原因について詳しくみていきましょう。
日照時間の減少とセロトニン分泌の低下
冬季うつ病の発症には、日照時間の減少とセロトニン分泌の低下が大きく関係しています。セロトニンは、気分の安定や幸福感を支える神経伝達物質で、日光を浴びることで分泌が促進されますが、冬は日照時間が短いため、分泌が減少しやすくなります。
また、セロトニンは気分の調整だけでなく、睡眠、食欲、体温調節にも影響します。そのため、セロトニンが不足すると、気分の落ち込みや過眠、過食、倦怠感といった冬季うつ病のさまざまな症状が現れやすくなるのです。日照時間減少が冬季うつ病の大きな原因の一つなので、日中に屋外で過ごす時間を確保し、セロトニン分泌を促進し、体内時計を調整しましょう。
セロトニンを増やす方法は以下の記事でさらに詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
『幸せホルモン「セロトニン」の増やし方!食事や生活習慣で自然に改善』
メラトニン分泌リズムの乱れ
メラトニンは、私たちの睡眠と覚醒のリズムを調整するホルモンで、日没後に分泌が増加し、夜間にピークを迎えます。そして、日の出とともに分泌が減少し、日中は低いレベルを保ちます。このリズムが正常に働くことで、規則的な睡眠サイクルが維持されるのです。
上記で紹介したセロトニンは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌にも関わっています。冬は日照時間が短くなるため、セロトニンの分泌が低下し、これがメラトニンのリズムにも影響を及ぼします。このリズムの乱れにより、睡眠の質が低下し、冬季には夜に眠れなかったり、日中に強い眠気を感じやすくなったりする可能性があります。
体内時計のずれ
体内時計は、約24時間周期で変動し、私たちの睡眠やホルモン分泌などを調整しています。この体内時計の中枢は脳の視床下部にあり、光を浴びることで毎日リセットされます。しかし、冬は日照時間が短いため、体内時計のリセットがうまくいかず、リズムが本来の24時間周期からずれやすくなるのです。このずれが、冬季うつ病の原因の一つと考えられています。
体内時計が後ろにずれると、朝起きるのがつらくなり、日中の活動が低下し、夜も寝付きにくくなります。一方、前にずれると夕方に眠気が強くなり、朝早く目が覚めてしまうこともあるでしょう。このような睡眠リズムの乱れは、気分の落ち込みや倦怠感など、冬季うつ病の症状を悪化させる可能性があります。
遺伝的要因・生活習慣の影響
冬季うつ病の発症には、遺伝的要因と生活習慣の影響も考えられています。家族にうつ病の既往歴がある方は、冬季うつ病のリスクが高まる可能性があります。セロトニンやメラトニン、ビタミンDなどの代謝に関わる遺伝子も、発症リスクに影響する可能性が示唆されています。
また、生活習慣の乱れは、冬季うつ病の発症リスクを高めます。不規則な睡眠や食生活、運動不足などは体内時計の乱れやセロトニン分泌の低下につながり、症状を悪化させる可能性があります。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい睡眠は、冬季うつ病の予防や症状の改善に役立つので、積極的に取り入れましょう。
冬季うつになりやすい人の特徴
冬季うつ病は誰にでも起こりうる病気ですが、特に以下のような特徴を持つ人は発症しやすい傾向にあります。
特徴 | 詳細 |
女性 | 女性は男性に比べて約4倍発症しやすいと言われています。これは女性ホルモンの変動が影響していると考えられています。 |
若年層 | 20代から30代の若い世代に多くみられます。 |
東北や北陸などの日本海側に居住 | 冬になると曇りがちになり、日照時間が短い地域に住んでいる人は、冬季うつ病を発症するリスクが高くなります。これは日照時間の減少が体内時計やホルモンバランスに影響を与えるためです。 |
米国では高緯度地域に住んでいる人の冬季うつ病発症率が高いと言われています。日本では、緯度が高い北海道や、曇りや雪の日が多くなる日本海側の地域に住む方の発症率が高いようです。
また、過去に冬季うつ病を経験した人や、ストレスの多い生活、不規則な生活、栄養バランスの偏った食事を摂っているなど生活習慣が乱れている人も発症しやすい傾向にあります。
これらの特徴に当てはまるからといって必ずしも冬季うつ病を発症するとは限りませんが、心当たりのある方は日頃から生活習慣に気をつけ、気分の変化に注意を払いましょう。
冬季うつによく似た症状の病気
冬季うつ病は、他の精神疾患と症状が似ていることから診断が難しいケースがあります。特に、双極性障害や非定型うつ病は冬季うつ病と似た症状を示すことがあり、注意が必要です。
双極性障害
双極性障害は、気分が大きく変動する病気です。気分が高揚し活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込み意欲が低下する「うつ状態」を繰り返します。
冬季うつ病との違いは、双極性障害は季節に関係なく気分の変動がみられることです。また、双極性障害では、冬季うつ病にはない「躁状態」がみられます。
非定型うつ病
非定型うつ病は「新型うつ病」とも呼ばれ、気分の落ち込みに加えて、過眠、過食、強い疲労感といった症状が現れます。これらは冬季うつ病に似ており、区別が難しい場合もあります。また、従来のうつ病と混同されやすいことも特徴です。
自己判断は難しいため、冬季うつ病か非定型うつ病か迷う場合や、症状が続く場合は、医療機関を受診して専門家の診断を受けることが大切です。
うつ病については以下の記事でも解説しています。うつの症状にお悩みの方はぜひご覧ください。
『自分では気づきにくい?うつ病の初期症状15個と対処法を解説』
『うつ病が治らない原因とは?治療方法について詳しく紹介』
『うつ病の特徴とは?こころと身体に出る症状や睡眠障害を詳しく紹介』
冬季うつかも?と思ったらみつだクリニックにご相談ください
冬季うつ病の症状は、気分の落ち込みや倦怠感など、他の病気と似ている場合があり、自己判断が難しいケースが多いです。
ご自身で冬季うつ病かどうかを判断するのは困難なので、少しでも「もしかして?」と感じたら、医療機関に相談しましょう。
大阪府茨木市にあるみつだクリニックは、冬季うつ病をはじめとする気分障害の診療を行っている精神科・心療内科クリニックです。
患者さま一人ひとりに寄り添い、丁寧な診療を心がけていますので、お気軽にご相談ください。診療は予約制です。お電話または以下のフォームからご予約ください。
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まとめ
冬季うつ病は、日照時間の減少に伴い、気分の落ち込みや過眠、過食といった症状が現れる病気です。主な原因は、日照時間の減少によるセロトニン分泌の低下やメラトニン分泌リズムの乱れだと考えられています。
冬季うつ病は、他の精神疾患と似た症状が現れることもあるため、自己判断せず専門家への相談が重要です。
一人で悩まず、医療機関に相談することで、適切な診断と治療を受けることができます。早期の対応が症状の改善につながりますので、お気軽に医療機関にご相談ください。