不眠症の症状とは?タイプ別の原因と改善策も解説
現代社会において、多くの人が睡眠に関する悩みを抱えています。十分な睡眠を取ることが難しいと感じる夜を、あなたは何度経験したことがあるでしょうか?
実際、日本人の5人に1人が睡眠に何らかの問題を抱えており、その中でも「不眠症」は深刻な問題となっています。不眠症は、ただの睡眠不足とは異なり、心身にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで今回は、不眠症の症状やその影響について詳しく解説していきます。睡眠に不安を感じている方は、ぜひ本記事を通してご自身の状態を把握し、適切な対処法を見つけるための一助としてください。
不眠症は5人に1人が悩む国民病
不眠症は、決して珍しい症状ではありません。厚生労働省の令和4年(2022)「国民健康・栄養調査」によると、国民の20.6%が慢性的な不眠であるというデータが出ています。
平成21年からの推移で見ると男女とも有意に増加しており、1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満の割合が最も高く、男性32.7%、女性36.2%となっています。
睡眠不足や不眠症が続くと、日中の眠気や倦怠感だけでなく、集中力や作業効率の低下など、生活の質に大きな影響を及ぼします。
睡眠不足は、単なる疲労感だけでなく、さまざまな病気のリスクを高める要因ともなり得るため、注意が必要です。
不眠症については以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『不眠症とは?原因や治療法・自分でできる治し方をわかりやすく紹介』
不眠症の診断基準
不眠症とは、睡眠に何らかの問題が生じている状態を指します。具体的には、なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝早くに目が覚めてしまい再び眠れないといった症状が見られます。
このような睡眠の問題は、一時的なものから慢性的なものまでさまざまですが、3ヶ月以上も続き、日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が出現した場合に、不眠症と診断されることが多いです。
国際的に広く用いられている精神疾患の診断基準であるDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)では、不眠症の診断基準は以下の通りです。
- 入眠の困難、睡眠維持の困難、早朝覚醒、再入眠できないなどの症状のうち、少なくとも一つが3ヶ月以上続いている
- 睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる
- 睡眠障害が日中の機能障害の原因となっている
- 睡眠障害は他の睡眠障害(ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害など)によるものではない
- 睡眠の適切な機会があるにも関わらず眠ることができない
- 睡眠障害は他の精神疾患による二次的な症状ではない
- 睡眠障害は物質(衣料品、乱用薬物)の影響によるものではない
これらの基準を満たす場合、不眠症と診断される可能性があります。ただし、自己判断はせず、医療機関を受診して正確な診断を受けることが大切です。
不眠症の診断基準については以下の記事でさらに詳しく紹介しています。
『不眠症の診断基準とは?診断方法や病院を受診するメリットを紹介』
不眠症の症状とは
不眠症には、下記のような症状が見られます。
- なかなか寝つけない:入眠障害
- 夜中に何度も目が覚める:中途覚醒
- 朝早くに目が覚めて眠れない:早朝覚醒
- ぐっすり眠れない:熟眠障害
これらの症状が1つ、あるいは複数見られる場合は、不眠症の可能性があります。それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。
なかなか寝つけない:入眠障害
なかなか寝つけない症状は「入眠障害」と呼ばれ、不眠症の代表的な症状の一つです。布団に入ってから30分〜1時間経っても眠れない、あるいは寝つきが悪く、眠るまでに非常に時間がかかってしまうといった状態が続きます。
入眠障害の原因には、ストレス、不安、環境の変化、生活習慣の乱れなどさまざまなものが考えられます。
例えば、仕事や人間関係などでストレスを感じていると、脳が興奮状態になってしまい、なかなか眠れないことがあるでしょう。また、将来への不安や心配事があると、それらが頭の中をぐるぐると回り、眠りを妨げてしまうこともあります。
入眠障害が続くと、日中の眠気や倦怠感、集中力低下などを引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。
夜中に何度も目が覚める:中途覚醒
不眠症の症状の一つに、「中途覚醒」があります。これは、夜中に何度も目が覚めてしまう症状です。中途覚醒は、睡眠が浅い状態になりやすく、ちょっとした物音や光、温度変化などの刺激によって目が覚めやすくなります。また、加齢とともに睡眠が浅くなることに加え、夜間頻尿なども影響してトイレの回数が増えることがあります。さらに、夜中に何度も目が覚めることで、再び眠りにつくことに不安やストレスを感じるようになり、寝つきが悪くなることがあります。
中途覚醒の原因には、ストレスや不安、睡眠環境の問題(室温、湿度、寝具、騒音など)、生活習慣の乱れ(不規則な睡眠時間、寝る前のカフェインやアルコール摂取、喫煙など)、身体的な問題(痛み、かゆみ、呼吸器疾患、夜間頻尿など)、精神的な問題(うつ病、不安障害など)、薬の副作用など、さまざまなものが挙げられます。
中途覚醒を繰り返すことで、睡眠時間が十分に確保できず、日中の眠気や倦怠感、集中力低下などの原因になる可能性があります。
朝早くに目が覚めて眠れない:早朝覚醒
早朝覚醒とは、文字通り朝早くに目が覚めてしまい、その後眠れなくなる症状のことを指します。
一般的には、通常の起床時間の2時間以上前に目が覚めてしまう、週に3回以上症状が見られる場合に、早朝覚醒と診断されることが多いです。
早朝覚醒に伴い、日中の眠気、集中力の低下、疲労感、抑うつ気分などが現れることもあります。
早朝覚醒は、うつ病などの精神疾患や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が隠れている可能性があります。また、加齢やストレス、不規則な生活習慣、アルコールやカフェインの摂取、寝る前のスマホやパソコンの使用なども原因として挙げられます。
早朝覚醒が続く場合は、これらの原因について医療機関に相談してみましょう。
ぐっすり眠れない:熟眠障害
睡眠時間は十分に確保できているはずなのに、日中に強い眠気や倦怠感を感じる場合は「熟眠障害」の可能性があります。ぐっすり眠れていないため、睡眠をとっても脳や体が十分に休まりません。
熟眠障害の原因はさまざまですが、例えば、仕事や人間関係などでストレスを感じると、脳が興奮状態になり、眠りが浅くなってしまうケースが多く見られます。その他にも、睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」や、脚に不快な感覚があり、睡眠中に脚を動かしたくなってしまう「むずむず脚症候群」なども、熟眠障害を引き起こす可能性があります。また、夜更かしや昼夜逆転の生活などによって体内時計が乱れる「概日リズム睡眠障害」も、睡眠の質を低下させる要因の一つです。さらに、睡眠薬など、一部の薬には眠りが浅くなる副作用があることも知られています。
睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも目を向けることが重要です。
不眠症からくる症状とは
不眠症によって、睡眠不足の状態が続くと、さまざまな身体的・精神的な症状が現れます。
- 倦怠感がある
- イライラする
- 意欲や集中力が低下する
- 感情の制御ができなくなる
- 注意力や判断力が鈍る
- 食欲が湧かない
以上の症状について詳しく見ていきましょう。
倦怠感がある
不眠症が続くと、日中に強い倦怠感や疲労感を覚えるようになります。これは、睡眠不足によって脳や身体が十分に休養を取ることができず、正常な機能を維持することが難しくなるためです。
身体的な疲労としては、全身のだるさ、重さ、疲れやすさなどが挙げられます。
また、精神的な疲労も現れ、意欲の低下や集中力の低下、無気力などを感じるようになります。
このような状態が続くと、仕事や勉強のパフォーマンスが低下したり、家事や育児に集中することが難しくなったりするなど、日常生活にさまざまな支障をきたす可能性があります。
イライラする
睡眠不足が続くと、脳や身体が休まらず疲労が蓄積されます。その結果、自律神経のバランスが乱れ、精神的に不安定になりやすくなります。普段は冷静に対応できるような些細な出来事に対しても、過剰に反応してしまったり、怒りを感じやすくなったりしてしまうことがあるでしょう。
例えば、電車の遅延やインターネット回線が遅いといったことにイライラしたり、些細なことで激怒したり、急に悲しくなったりするなど、感情の起伏が激しくなることがあります。また、家族や友人など、身近な人に八つ当たりしてしまうこともあるでしょう。
これらの症状が悪化すると、人間関係の悪化や、うつ病などの精神疾患を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
意欲や集中力が低下する
不眠症によって睡眠不足の状態が続くと、日中の活動に支障をきたすことがあります。十分な睡眠を取れないことで、脳の働きが低下し、意欲や集中力が低下してしまうからです。
例えば、仕事や勉強、趣味など、普段は意欲的に取り組めることに対して、やる気が起きなくなったり、億劫に感じたりすることがあります。
また、仕事や勉強に集中することが難しく、ミスが増えて作業効率が低下することもあるでしょう。
これらの症状は、日常生活や仕事のパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。
感情の制御ができなくなる
慢性的な睡眠不足は、感情をコントロールする脳の機能を低下させます。そのため、些細なことでイライラしたり、急に不安に襲われたり、感情の起伏が激しくなることがあります。
例えば、普段は気にならないようなことでも、睡眠不足の状態だと過剰に反応してしまい、些細なことでカッとなってしまうことがあります。
また、睡眠不足によってストレスホルモンが過剰に分泌されることも、イライラしやすくなる原因の一つと考えられています。
注意力や判断力が鈍る
十分な睡眠が取れないと、脳の働きが低下し、集中力や判断力が鈍ることがあります。注意力散漫になると、1つのことに集中することが難しくなり、仕事中にミスが増えたり、会議の内容が頭に入ってこなかったりします。仕事や勉強の効率が低下したり、事故のリスクが高まったりすることもあるでしょう。
また、判断力も低下し、正しい判断を下すことが難しくなります。些細なことで決断に迷ったり、衝動的な行動をしてしまったりするなど、日常生活においてさまざまな支障をきたす可能性があります。
食欲が湧かない
不眠症が続くと、食欲にも影響が出ることがあります。
睡眠不足の状態が続くと、体内では食欲を抑制するホルモンである「レプチン」の分泌量が減少し、食欲を促進するホルモンである「グレリン」の分泌量が増加します。
このホルモンバランスの乱れによって、食欲が減退したり、逆に過剰に食欲が出てしまったりすることがあるのです。
また、不眠によって自律神経のバランスが乱れることも食欲減退につながります。自律神経は、体のさまざまな機能をコントロールしており、食欲もその一つです。自律神経のバランスが乱れると、消化機能が低下し、食欲が湧かなくなることがあります。
不眠症の症状に当てはまる方はみつだクリニックにご相談ください
不眠症の症状に悩まされている方は、ぜひ一度、みつだクリニックにご相談ください。みつだクリニックは、不眠症をはじめとする睡眠障害の治療に力を入れています。患者さま一人ひとりの症状に寄り添い、適切な治療法をご提案いたします。
不眠症は、適切な治療と生活習慣の改善によって症状を和らげることができます。睡眠に関するお悩みは、我慢せずに、お気軽にご相談ください。
みつだクリニックは、患者さまが安心して眠れる毎日を取り戻せるように、全力でサポートいたします。
診療は予約制です。一人で悩まず、まずは以下のフォームからご予約ください。
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まとめ
不眠症は、睡眠の問題だけでなく、日中の生活にも大きな影響を及ぼします。例えば、入眠障害は仕事や家事に集中できない原因になりますし、中途覚醒は疲労感が取れず、日中の活動性が低下することにつながります。また、早朝覚醒は朝から憂鬱な気分になってしまいます。熟睡障害は、頭痛や食欲不振などを引き起こす可能性があるでしょう。
不眠症の症状に悩まされている方は、一人で抱え込まず、専門医に相談することをおすすめします。適切な診断と治療を受け、不眠症を改善して健康的な生活を取り戻しましょう。