適応障害の治し方|回復の兆候と具体的な対策方法を解説
現代社会において、ストレスは誰もが抱える身近な問題です。適応障害は、そのストレスが原因で心身にさまざまな症状が現れる疾患です。
仕事や人間関係、環境の変化など、私たちを取り巻く環境は常に変化しており、それらに適応しようと心身ともに負担がかかることがあるでしょう。過剰なストレスに長期間さらされると、心身のバランスが崩れ、適応障害を発症する可能性があります。
適応障害は、適切な治療によって回復が期待できる疾患です。
本記事では、適応障害の治し方について、具体的な対策方法や回復までの流れを詳しく解説します。
適応障害とは?
適応障害とは、特定のストレス要因によって引き起こされる精神疾患です。 進学、就職、結婚、出産、引っ越し、人間関係の変化といった生活上の変化や、職場や学校でのトラブル、大切な人との死別など、さまざまな出来事がストレス要因となり得ます。
これらのストレスに適応できず、著しい苦痛や身体機能の低下が生じた場合に、適応障害と診断されます。
適応障害は、ストレス要因が発生してから3ヶ月以内に症状が現れることが特徴です。症状は、抑うつ気分、不安、焦燥感、集中力の低下、不眠、食欲不振、倦怠感などさまざまです。 また、頭痛、腹痛、動悸などの身体症状を伴う場合もあります。
適応障害とうつ病の違いとは
適応障害とうつ病は、どちらも気分の落ち込みや意欲の低下といった似た症状が現れるため、混同しやすい精神疾患です。しかし、原因や経過に違いがあり、それぞれ適切な治療法も異なります。
主な違いを以下の表にまとめました。
項目 | 適応障害 | うつ病 |
原因 | 特定のストレス要因(例:職場環境の変化、人間関係のトラブル、死別、引っ越し、結婚など) | 明確な原因がない場合もある(複数の要因、脳内物質のアンバランスなどが考えられる) |
発症時期 | ストレス要因から3ヶ月以内 | 特定の時期に関連しない |
症状の持続期間 | ストレス要因が解消されれば6ヶ月以内に改善することが多い | 6ヶ月以上続くことが多い |
ストレスへの反応 | ストレス要因に対する過剰反応 | 過剰反応ではなく、慢性的な抑うつ状態 |
例 | 失恋で日常生活に支障が出るほどの深い悲しみや強い不安、怒りなどを抱く | 抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲不振、不眠などが慢性的に続く |
適応障害とうつ病は異なる疾患であり、自己判断は危険です。「適応障害かもしれない」と思ったら、医療機関を受診し専門家の診断を受けましょう。
うつ病については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
『うつ病が治らない原因とは?治療方法について詳しく紹介』
『うつ病の特徴とは?こころと身体に出る症状や睡眠障害を詳しく紹介』
『うつ病のチェック方法|セルフチェックリストや対処法を紹介』
適応障害の治し方
適応障害の治し方には、さまざまなアプローチがあります。
- ストレス要因を遠ざける
- 規則正しい生活リズムを維持する
- 有酸素運動を行う
- バランスの取れた食事を摂る
- 周囲のサポートを受ける
- 精神療法を受ける
- 薬物療法を受ける
以上の方法について詳しく見ていきましょう。
ストレス要因を遠ざける
適応障害を治すには、症状を引き起こしているストレス要因を特定し、可能な限り遠ざけることが重要です。
職場での人間関係が原因であれば、部署異動を検討したり、休職を取得することも有効な手段となります。
また、家庭環境が問題であれば、一時的に実家に帰るなど、物理的に離れる方法を取るのも良いでしょう。それぞれの状況に応じて適切な対処法を見つけることが大切です。
しかし、ストレス要因を完全に取り除くことが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、ストレスをうまく管理するストレスマネジメント法がおすすめです。具体的な方法としては、リラクゼーション法やマインドフルネス、ヨガなどが挙げられます。
規則正しい生活リズムを維持する
適応障害の治療において、規則正しい生活リズムを維持することは非常に重要です。睡眠、食事、活動時間など、生活リズムを整えることで、自律神経のバランスが調整され、心身の安定につながります。
睡眠不足はストレスへの抵抗力を弱め、適応障害の症状を悪化させる可能性があります。寝る前にカフェインを摂取したり、激しい運動をしたりすることは避け、リラックスできる環境を整えましょう。
有酸素運動を行う
適応障害の改善には、有酸素運動も効果的です。有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、水泳など、比較的長時間続けられる軽い運動が適しています。週に3回以上、1回あたり30分程度の運動を継続することで、ストレスホルモンの分泌が抑制され、精神的な安定につながります。
また、セロトニンの分泌も促進されるため、気分の改善にも効果が期待できます。日中に活動的に過ごすことで、夜に質の高い睡眠をとることができます。
軽い運動や趣味、散歩など、自分が楽しめる活動を見つけ、積極的に取り組むようにしましょう。ただし、過度な運動はストレスとなる場合があるので、自分の体調に合わせて無理のない範囲で行うようにしてください。
バランスの取れた食事を摂る
適応障害の改善には、バランスの取れた食事を摂ることも重要です。バランスの取れた食事は、心身の健康を維持する上で欠かせません。特に、ビタミンB群、トリプトファン、鉄分などは、精神的な安定に重要な役割を果たしています。これらを多く含む食品を以下にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
栄養素 | 働き | 多く含む食品 |
ビタミンB群 | 脳の神経伝達物質の合成に関与 | 豚肉、レバー、うなぎ、玄米 |
トリプトファン | 精神を安定させるセロトニン合成の原料となる必須アミノ酸 | 牛乳、大豆製品、バナナ、卵 |
鉄分 | 血液中のヘモグロビンの構成成分、酸素を全身に運ぶ | レバー、ほうれん草、ひじき |
これらの栄養素をバランス良く摂取することで、ストレスへの抵抗力を高め、心の健康を維持することができます。
また、暴飲暴食や過度なダイエットは、栄養バランスを崩し、精神的な不安定につながる可能性がありますので、注意が必要です。規則正しい時間に、バランスの良い食事を心がけましょう。
周囲のサポートを受ける
適応障害からの回復には、周囲の理解とサポートも大きな力となります。
家族や友人、職場の上司や同僚に、自分の状況や気持ちを伝えることで、精神的な負担を軽減し、回復を促進することにつながります。
周囲のサポートを受けることは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、積極的に助けを求めることで、回復への道が開けることもあります。信頼できる人に相談し、理解とサポートを得ることで、あなたは一人ではないことを実感し、前向きな気持ちで治療に取り組むことができるでしょう。
精神療法を受ける
適応障害の治療においては、精神療法も有効な手段の一つです。精神療法にはさまざまな種類がありますが、適応障害の治療でよく用いられるのは、カウンセリングや認知行動療法です。
カウンセリングでは、患者さんが安心して自分の気持ちを話せる環境を作ることを大切にします。そして、抱えている問題やストレスについてじっくりと話し合い、自分自身で解決策を見つけられるようにサポートしていきます。ストレスの原因やそれに対する考え方、感じ方などを整理することで、気持ちが楽になり、症状の改善につながることが期待できるでしょう。
認知行動療法は、考え方や行動のパターンに焦点を当てた治療法です。ストレスとなる出来事に対して、患者さんがどのような考え方をしているのかを分析し、非現実的あるいは非適応的な考え方になっている部分があれば、それを修正していきます。具体的な方法としては、ストレスを感じたときの状況、考え、感情、行動、結果を記録し、その記録を振り返りながら、より適応的な考え方や行動を身につけていきます。
症状がなかなか改善しない場合は、まずは医師に相談しましょう。
薬物療法を受ける
薬物療法は、適応障害の症状を緩和するために、抗うつ薬や抗不安薬などを用いる治療法です。薬物療法は、精神療法と並行して行われることが一般的です。
抗うつ薬は、気分の落ち込みや意欲の低下といった抑うつ症状を改善する効果が期待できます。代表的な抗うつ薬として、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などがあります。
これらの薬剤は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きを高めることで、抑うつ症状を改善します。
薬物療法を行う際には、医師の指示に従って適切な薬剤を選択し、適切な量と期間で服用することが重要です。自己判断で薬剤の服用を中止したり、量を変更したりすることは危険です。また、薬剤によっては副作用が現れる場合があるので、医師に相談しながら慎重に治療を進める必要があります。
薬物療法はあくまで対症療法であり、根本的な解決にはストレス要因への対処が不可欠です。
適応障害の回復までの流れ
適応障害の回復には、大きく分けて3つの時期があります。それぞれの時期の過ごし方を理解しておくことで、回復の遅れや、適応障害の再熱を防ぐことができます。
以上の流れについて見ていきいましょう。
休養期
適応障害の回復は、まず休養期から始まります。この段階は、心身の疲労が蓄積し、ストレスへの抵抗力が著しく低下している状態です。心身ともに大きな負担がかかっているため、休息と回復に専念することが何よりも重要になります。
症状の重さによっては、数日から数週間、場合によっては数ヶ月程度の休養が必要となることもあるでしょう。この時期は、仕事や学校を休んだり、負担の大きい人間関係と一時的に距離を置くなど、ストレスの原因から離れることが不可欠です。
焦らずに心身の回復を最優先し、ゆっくりと時間をかけて過ごしましょう。趣味を楽しんだり、リラックスできる活動に取り組むことも、心身のバランスを取り戻すのに役立ちます。この休養期をしっかりと過ごすことで、次のリハビリ期に向けての土台を築くことができます。
リハビリ期(回復期)
リハビリ期(回復期)に入ると、心身ともに安定してきて、日常生活に支障が出るほどの症状は落ち着いてきます。 この段階では、徐々に活動レベルを上げていくことが重要です。焦らず、自分のペースで社会復帰を目指しましょう。
まずは短時間の外出や軽い運動から始め、徐々に仕事や学業の時間を増やしていくのがおすすめです。復職や復学にあたっては、主治医や周囲の人々と相談しながら、無理のない範囲で進めていきましょう。
職場や学校への復帰後は、ストレスをため込まないように、休息時間をしっかりと確保し、周りの人にサポートを求めながら、焦らずに自分のペースで取り組むようにしてください。
この段階では、再発を防ぐための対策も重要になります。 ストレスへの対処法を身につけたり、生活習慣を整えたりすることで、再発のリスクを減らしましょう。 また、定期的に医療機関を受診し、医師のアドバイスを受けることも大切です。
調整期
調整期は、適応障害の症状が軽くなり、日常生活を少しずつ取り戻す大切な時期です。この時期には、再発を防ぐための工夫が必要です。ストレスの対処方法を学び、ストレスを感じても冷静に対応できるよう、心構えや具体的な方法を身につけましょう。
例えば、以下のようなことが効果的です。
ストレスを感じたときに気分転換になるものを見つける。
深呼吸や瞑想など、心を落ち着ける方法を試す。
イライラ、浅い眠り、食欲減退など、自分がストレスを感じたときの変化を早めに察知して対処する。
また、周囲のサポートも重要です。家族や友人、職場の同僚など、信頼できる人に自分の気持ちを共有し、理解を得ることで、心の負担が軽くなります。さらに、医療機関やカウンセラーと連携し、定期的な診察や相談を受けることもおすすめです。
回復しても、しばらくはストレスに敏感な状態が続くことがあるため、無理をせずに自分のペースで日常生活や社会生活に戻ることが大切です。一度に頑張りすぎず、少しずつ活動量を増やすよう心がけましょう。
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適応障害は、早期の適切な治療によって改善を見込める疾患です。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
適応障害は、特定のストレス要因に対する過剰な反応によって引き起こされる精神疾患です。症状は人それぞれですが、気分の落ち込みや不安、イライラ、集中力の低下、身体的な不調などが見られます。
適応障害の治し方のポイントは、ストレス要因を特定し、可能な限りそれを取り除くことです。ストレスの原因となっている環境から距離を置く、人間関係を見直すなど、具体的な対策をしましょう。
症状が重い場合は、医療機関を受診し、専門家の指導を受けることが必要です。精神療法や薬物療法など、適切な治療を受けることで、症状の改善を図ることができます。
適応障害は、適切な対処によって回復が期待できる疾患です。焦らず、自分のペースで治療に取り組み、心身の健康を取り戻しましょう。