セルフ認知行動療法のやり方4選を詳しく解説|セルフケアを続けるコツも
「認知行動療法はセルフでもできるの?」「具体的にどのように取り組めばよい?」と気になる方も多いでしょう。
認知行動療法は、専門家と一緒に行う方法だけでなく、ワークシートや記録などを使って自分で取り組むこともできます。
この記事では、セルフモニタリング法・リラクゼーション法・コラム法・行動活性化のやり方をはじめ、セルフで行うメリット・デメリットや続けるコツ、医療機関への受診を検討したほうがよいケースについて紹介します。
認知行動療法とは
認知行動療法とは、出来事そのものだけでなく、その出来事をどう受け止めたかという認知と、その後の行動に目を向ける心理療法です。
たとえば仕事でミスをしたとき、一度失敗したから自分は何をやってもだめだと考えると、落ち込みが強くなり、次の行動を避けたくなることがあります。
そこで、認知行動療法を通じて出来事を多面的に捉え、より現実的な見方や行動を考えていきます。
認知行動療法についてのより詳しい解説は、以下の記事でも紹介しています。
『認知行動療法とは?具体的な進め方やセルフケア方法を紹介』
認知行動療法はセルフでも行える
認知行動療法は、ワークシートや記録などを活用して自分で実践することもできます。
日常生活の中で少しずつ取り入れられるため、「まずは自分でできることから試してみたい」という方にも始めやすい方法です。
セルフでできる認知行動療法のやり方4選
セルフで取り入れやすい認知行動療法には、主に次の4つがあります。
- セルフモニタリング法
- コラム法
- リラクゼーション法
- 行動活性化
最初からすべて行う必要はありません。「これならできそう」と思えるものから始めてみましょう。
1.セルフモニタリング法
セルフモニタリング法とは、自分の感情や考え、身体の反応、行動などを記録し、どのような場面で心身の変化が起こりやすいのかを振り返る方法です。
自分の考えを変えることよりも、まずはそのときの反応を記録し、自分にどのような傾向があるのかを把握することを目的とします。
まずは、気持ちが大きく動いた出来事を一つ選び、そのときの状況をできるだけ具体的に書き出します。次に、その場面で頭に浮かんだ考えや感情、身体の変化、実際に取った行動を順番に整理します。
たとえば「上司に注意された」という出来事があった場合は、以下のように記録します。
| 項目 | 記載内容 | 記載例 |
| 出来事 | 何が起きたのかを書く | 上司に仕事のミスを指摘された |
| 考え | そのとき何を考えたのかを書く | 「自分は評価されていないのではないか」と思った |
| 感情 | そのときどのような気持ちになったのかを書く | 不安や落ち込みを感じた |
| 身体の反応 | そのとき身体にどのような変化があったのかを書く | 胸が苦しくなった、肩に力が入った |
| 行動 | そのあとにどのような行動を取ったのかを書く | そのあと、人との会話を避けた |
毎回詳しく書く必要はありません。まずは気になった出来事を一つ選び、短い言葉で記録することから始めると続けやすいでしょう。
セルフモニタリング法のメリット
セルフモニタリング法のメリットは、自分の考え方や感情、行動の傾向を客観的に把握しやすくなることです。
記録を続けることで、「どのような場面でストレスを感じやすいのか」「どのような考え方をすると気分が落ち込みやすいのか」といった、自分の苦手な部分や課題が見えやすくなります。
自分の傾向が分かると、ストレスを感じたときにどのように対処すればよいかも考えやすくなります。そのため、セルフモニタリングを続けることは、自分に合ったストレスへの対処法を身につけることにもつながります。
セルフモニタリング法が向いているケース
セルフモニタリング法は、自分の感情の波や考え方のクセ、行動パターンを冷静に振り返りたい方に向いています。
たとえば、「いつも同じような場面で落ち込んでしまう」「何がきっかけで不安やイライラが強くなるのか分からない」と感じている場合に効果的な方法です。
日々の出来事と自分の反応を記録して振り返ることで、これまで気づかなかった傾向が見えてくることもあります。自分自身への理解を深め、今後の対処方法を考えたい方にも適しています。
2.コラム法
コラム法とは、ストレスを感じた出来事と、そのときに浮かんだ考えや感情を書き出し、物事の捉え方を整理する方法です。
セルフモニタリング法が自分の反応や傾向を把握する方法であるのに対し、コラム法では、頭に浮かんだ考えの根拠や反証まで確認し、より現実的な捉え方を検討していきます。
具体的には、以下のような流れで行います。
| 項目 | 記載内容 | 記載例 |
| 状況 | いつ、どこで、どのようなことがあったかを具体的に書く | 友人に連絡をしたが既読無視されている |
| 気分 | 不安、悲しみ、怒りなど、そのときの気持ちを書き出す | 悲しさ80%、不安60% |
| 自動思考 | その瞬間に頭に浮かんだ考えをそのまま記録する | 嫌われたのかもしれない |
| 根拠 | 浮かんだ考えが事実だと思える理由や根拠を書き出す | 既読になってからしばらく返信が来ていない |
| 反証 | 浮かんだ考えが事実ではないかもしれないと思える、反対の証拠を探して書き出す | これまでは普通に連絡を取り合っており、返信が遅いこともあった |
| 適応的思考 | 事実を踏まえて、より現実的で柔軟な考え方がないか検討する | 返信が遅いだけで嫌われたとは限らず、忙しい可能性もある |
| 気分の変化 | 最初と比べて、感情の強さが変わったかを振り返る | 悲しさ50%、不安30% |
無理に前向きな考えへ変えることが目的ではありません。一つの考えに偏っていないかを振り返り、より現実に沿った捉え方を探すことがポイントです。
コラム法のメリット
コラム法のメリットは、自分でも気づいていなかった考え方のクセを整理しやすくなることです。
頭の中だけで考えていると、一つの考えにとらわれてしまうことがあります。紙やスマートフォンに書き出すことで、自分の考えと少し距離を取り、客観的に振り返りやすくなります。
また、同じような場面で繰り返し記録すると、「悪い結果を決めつけやすい」「自分を必要以上に責めやすい」など、自分の傾向に気づくきっかけにもなります。
気分がすぐに変わらなくても、「ほかの考え方もあることに」と気づくことが大切です。
コラム法が向いているケース
コラム法は、自分の考えを言葉にすることが苦にならず、書くことで頭の中を整理しやすい方に向いています。
特に、「一度気になることがあると何度も考えてしまう」「物事を悪い方向へ考えやすい」と感じている方に適しています。一方で、不安や落ち込みが強いときは、出来事を振り返ること自体が負担になる場合もあります。そのようなときは、無理に書き続ける必要はありません。
3.リラクゼーション法
リラクゼーション法とは、呼吸や筋肉の動きに意識を向け、心身の緊張をやわらげる方法です。
代表的な方法には、「漸進的筋弛緩法」と「自律訓練法」があります。
「漸進的筋弛緩法」は、身体の一部に数秒間力を入れたあと、ゆっくり力を抜く方法です。手を軽く握って5秒ほど力を入れたあとゆっくり力を抜き、同じように腕、肩、顔、脚などへ順番に行っていきます。力を抜いたときの感覚に意識を向けることがポイントです。
「自律訓練法」は、楽な姿勢で呼吸を整え、身体の感覚に意識を向け、心身を落ち着かせる方法です。椅子に座るか横になって楽な姿勢をとり、呼吸を整えます。そのうえで、「腕が重たい」「手足が温かい」などの感覚を、静かに意識します。
どちらも無理のない範囲で短時間から行い、違和感がある場合は中止しましょう。
リラクゼーション法のメリット
リラクゼーション法のメリットは、身体の緊張をやわらげ、心身のリフレッシュに役立つ点です。
不安やストレスが強いときは、頭の中で考えを整理しようとしても、なかなか気持ちを切り替えられないことがあります。そのようなときに身体の力を抜いたり呼吸を整えたりすることで、心身の緊張をやわらげやすくなります。
リラクゼーション法が向いているケース
リラクゼーション法は、日々のストレスや不安があり、身体にも緊張を感じている方に向いています。
「緊張すると肩や首がこる」「不安になると呼吸が速くなる」「身体に力が入りやすい」といった方に適しています。。また、考えを書き出すことに負担を感じる方が、まず身体を落ち着かせる方法として試すのもよいでしょう。
4.行動活性化
行動活性化とは、気分が良くなるのを待ってから動くのではなく、できる範囲で小さな行動を先に起こしていく方法です。
気分が落ち込むと、外出や人との交流などの活動が減りやすくなります。すると、楽しさや達成感を得る機会も少なくなり、さらに気分が落ち込むという悪循環につながることがあります。
行動活性化では、まず現在の生活や行動を振り返り、自分にとって楽しみや達成感につながりそうな行動を考えます。たとえば、「5分だけ散歩する」「シャワーを浴びる」「好きな飲み物を飲む」「机の上を一か所だけ片づける」など、無理なくできそうなことから始めます。大きな目標を立てるのではなく、今の自分でも実行できそうな小さな行動を選ぶことがポイントです。
行動活性化のメリット
行動活性化のメリットは、「やる気が出るまで待つ」という状態から抜け出すきっかけになることです。
気分が落ち込んでいると、行動する前から「今は何もできない」と感じることがあります。しかし、負担の少ない行動を一つ実行することで、達成感を得たり、気分が少し変化したりする場合があります。
大切なのは、できなかったときに失敗と考えないことです。今の自分には少し大きな目標だったと考え、無理なく実行できる内容に調整しましょう。
行動活性化が向いているケース
行動活性化は、気分の落ち込みによって以前より行動量が減っているものの、短い時間であれば何かできそうと感じる方に向いています。
考えすぎて行動に移せない場合や、やるべきことを前にすると億劫になってしまう場合にも取り入れやすい方法です。また、以前は楽しめていたことに関心が向きにくくなっている方や、生活にメリハリを取り戻したい方にも向いています。
認知行動療法をセルフで行うメリット
認知行動療法をセルフで行う主なメリットは、以下のとおりです。
決まった時間や場所に縛られず、自分の生活リズムに合わせて無理のない範囲で取り組めます。
インターネット上で無料公開されているワークシートや、市販のセルフケア本などを使って始められるため、比較的費用をかけずに実践できます。
ストレスを感じた場面や気分が落ち込んだときなど、日常のさまざまな場面で繰り返し実践できます。
認知行動療法をセルフで行うデメリット
一方、セルフで取り組む場合には、以下のようなデメリットがあります。
自分自身で考えを振り返るため、思い込みや考え方のクセを客観的に捉えにくい場合があります。
さまざまな方法があるため、今の自分にどの方法が適しているのか迷うことがあります。
セルフで取り組むには、基本的な考え方やワークの進め方を理解しておく必要があります。
セルフ認知行動療法を続けるコツ
セルフでの認知行動療法は、一度取り組めばすぐに大きな変化が現れるとは限りません。無理のない範囲で続けながら、自分の考え方や行動を少しずつ振り返っていくことが大切です。
セルフ認知行動療法を続けるコツは、以下のとおりです。
- 完璧に取り組もうとしない
- 1回5〜10分など短時間から始める
- 小さな変化を確認する
それぞれについて詳しく紹介します。
完璧に取り組もうとしない
はじめから毎日必ず記録したり、ワークシートをすべて埋めたりする必要はありません。
「今日は一行だけ書いた」「数分だけリラクゼーションを行った」など、できる範囲で十分です。完璧に取り組もうとすると、続けられなかったときに負担やストレスを感じやすくなります。できない日があっても気にせず、自分のペースで続けましょう。
1回5〜10分など短時間から始める
最初から長い時間を確保しようとすると、忙しい日や疲れている日に続けにくくなります。
まずは1回5〜10分程度を目安に始めてみましょう。たとえば、セルフモニタリング法なら寝る前に数行だけ書く、リラクゼーション法なら仕事や家事の合間に数分行うなど、負担にならない範囲で取り組むことが大切です。少しずつ生活の中に取り入れ、徐々に習慣化していくことがポイントです。
小さな変化を確認する
認知行動療法を自力で実施する場合、大きな変化だけを成果と考えないことも大切です。
「不安がなくなったか」だけではなく、「昨日より少し気持ちが楽だった」「考え込む時間が短くなった」「落ち込んだあとに散歩へ行けた」といった小さな変化にも目を向けてみましょう。変化を記録しておくと、後から振り返ったときに自分の状態の変化に気づきやすくなります。
セルフ認知行動療法だけでは不十分なケース
心身の状態によっては、一人で認知行動療法に取り組むことが適していない場合もあります。
セルフ認知行動療法だけでは対応が難しいケースは、以下のとおりです。
- 強い不安や希死念慮がある場合
- 考えを整理したりワークを続ける気力がない場合
- 日常生活に大きな支障が出ている場合
それぞれについて詳しく紹介します。
強い不安や希死念慮がある場合
不安や落ち込みが非常に強い場合や、「死にたい」「消えたい」といった考えが浮かぶ場合は、セルフケアだけで対処しようとせず、医療機関へ相談することが大切です。
心身の不調が強い状態では、自分の考えを冷静に振り返ったり、別の捉え方を考えたりすること自体が難しくなることがあります。無理にワークを続けるのではなく、専門家のサポートを受けることを優先しましょう。
考えを整理したりワークを続ける気力がない場合
ノートを開くこと自体が負担に感じたり、何を書けばよいのか考える余裕がない場合は、無理にセルフ認知行動療法を続ける必要はありません。
気力や集中力が落ちていると、普段なら簡単にできることにも大きな負担を感じる場合があります。セルフケアに取り組めないことを責めず、休養したり専門家へ相談したりすることが大切です。
日常生活に大きな支障が出ている場合
仕事や学校へ行けない、家事ができない、眠れない状態が続いている、食事が十分に取れないなど、日常生活に大きな支障が出ている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
「まだ我慢できる」「もう少し様子を見よう」と考えているうちに、症状が強くなることもあります。以前と比べて生活の様子が大きく変わったと感じた場合は、受診を検討することも大切です。
セルフケアで改善しないときは専門家に相談を
セルフ認知行動療法のみで、すべての悩みや症状を解決できるとは限りません。
何週間か続けても変化を感じない、ワークをするとかえってつらくなる、自分に合った方法が分からないといった場合は、医師や心理師などの専門家へ相談しましょう。
専門家に相談することで、自分に合った方法を一緒に考えてもらえるほか、自分一人では気付けなかった考え方に気付けることもあります。
また、不安や落ち込みの背景に、治療が必要な状態が隠れている場合もあります。
「受診するほどではないかもしれない」と迷っている段階でも、つらさが続いているのであれば相談を検討してみましょう。
認知行動療法による治療はみつだクリニックへ
みつだクリニック公式サイトはこちら
医療機関での認知行動療法を検討している場合は、みつだクリニックへご相談ください。
「セルフ認知行動療法を試しているが改善しているか分からない」「自分一人では考えを整理しにくい」「医療機関を受診したほうがよい状態なのか判断できない」といった場合は、医師へ相談してみましょう。
セルフケアを続けても改善が見られない場合や、日常生活への影響が大きくなっている場合は、一人で抱え込まず受診をご検討ください。
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まとめ
セルフ認知行動療法には、自分の考えや感情、行動を振り返るセルフモニタリング法、身体の緊張をやわらげるリラクゼーション法、考え方を整理するコラム法、小さな行動から始める行動活性化などがあります。
どの方法も、最初から完璧に取り組む必要はありません。1回5〜10分程度など無理のない範囲から始め、自分のペースで続けることが大切です。
一方で、不安や落ち込みが強い、ワークに取り組む気力がない、日常生活に支障が出ている場合は、セルフケアだけで抱え込まないことも重要です。
セルフ認知行動療法を続けても改善しない場合や、受診すべきか迷っている場合は、専門家への相談を検討しましょう。