適応障害で休職を考えているあなたへ|休職までの流れや過ごし方を紹介
「仕事に行こうとすると体が動かない」「ミスが怖くて夜眠れない」―そんな状態が続いているなら、それは単なる疲れではなく、心の限界サインかもしれません。
適応障害は、環境による強いストレスが原因で心身のバランスが崩れてしまう状態で、誰にでも起こりうる心の不調です。
この記事では、適応障害と診断された方、あるいはその疑いがあり「休職した方がいいのでは」と悩んでいる方に向けて、休職の重要性や過ごし方、手続きの流れなどをわかりやすく解説します。
適応障害の治療は「休職」がカギ
適応障害と診断されたとき、「休職するなんて甘えかもしれない」「仕事を休んでしまっていいのだろうか」と不安になる方は少なくありません。しかし、休職は逃げではなく、適応障害を根本から治療するための大切な選択です。
症状の改善には、無理を続けるのではなく、まず環境から距離を取ることが必要です。まずは、休職が治療にどうつながるのかを解説していきます。
適応障害の治療法である環境調整とは
適応障害の治療において、もっとも基本的なアプローチのひとつが「環境調整」です。環境調整とは、ストレスの原因となっている状況から距離を取り、ストレス要因を軽減または除去することを意味します。具体的には、職場でのトラブルや業務過多が原因であれば、休職や部署異動、配置転換といった措置が該当します。
この治療法のポイントは、原因を取り除かない限り症状の根本的な改善が難しいということです。無理に同じ環境でがんばり続けても、心の回復は追いつきません。だからこそ、まずは自分を守るために「一度休む」という判断が求められるのです。
無理を続けることで起きる心身のリスク
適応障害の状態で無理をして仕事や日常生活を続けると、心身にはさまざまな悪影響が生じます。例えば、強い不安や抑うつ症状、不眠、倦怠感、集中力の低下などが慢性的に続くようになり、日常生活にも支障をきたすこともあるでしょう。さらに悪化すると、うつ病など他の精神疾患に発展する可能性もあります。
無理を続けることは、自分自身をすり減らすだけでなく、回復までの時間を余計に長引かせてしまうことにもつながります。だからこそ、早い段階で「これは自分にとって負担だ」と認識し、休職という選択肢を前向きに捉えることが大切です。
適応障害の症状や治し方については、こちらの記事も参考にしてください。
『適応障害の症状とは?心と体に現れるサインを紹介』
『適応障害の治し方|回復の兆候と具体的な対策方法を解説』
適応障害での休職期間の過ごし方
適応障害の回復にとってもっとも大切なのは、「心と体が自然に回復していくリズム」を整えることです。無理をして行動を増やす必要はありません。
本項目では、休職中の過ごし方で意識しておきたいポイントを紹介します。
- 生活リズムを整える
- 無理のない範囲で外出や趣味に取り組む
- 日記や記録で感情を「見える化」する
- カウンセリングや療法を継続的に受ける
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
生活リズムを整える
適応障害からの回復には、まず「生活のリズムを整えること」が土台となります。ストレスで崩れがちな心身の状態を、睡眠・食事・運動といった基本的な生活習慣から立て直していくことが大切です。
例えば、夜更かしや昼夜逆転の生活は自律神経の乱れにつながり、症状の改善を妨げる原因になります。毎日決まった時間に起きて、バランスのとれた食事をとり、少しでも体を動かす時間を持つことを意識しましょう。特別なことをする必要はありませんが、毎日の「安定したリズム」が、心の安心感につながります。
無理のない範囲で外出や趣味に取り組む
心のエネルギーが少しずつ戻ってきたと感じられたら、無理のない範囲で外出や趣味に取り組んでみるのも効果的です。例えば、天気の良い日に15分だけ散歩をする、好きな音楽を聴く、絵を描く、読書をするなど、プレッシャーのない活動を取り入れてみましょう。
重要なのは、「楽しい」「心地良い」と思えることを、自分のペースで行うことです。無理に予定を詰め込むのではなく、やってみたいと思ったことを少しずつ生活に取り入れていくと、自然と心がほぐれていきます。
日記や記録で感情を「見える化」する
休職中は、感情の波や体調の変化が日によって異なることも多く、自分自身でも「今どんな状態なのか」がわかりにくくなることがあります。そんなときに有効なのが、日記や記録をつけて自分の状態を「見える化」することです。
例えば、その日の気分、体調、睡眠の質、印象に残った出来事などを簡単にメモしておくと、後から読み返したときに「少しずつ良くなっている」「ここがつらかったんだな」と気づけることがあります。また、ストレスの原因や症状の引き金に気づく手がかりにもなるため、主治医との面談時にも役立つでしょう。
記録は毎日でなくても構いません。思いついたときに、気軽に書ける方法で続けていくことがポイントです。
カウンセリングや療法を継続的に受ける
適応障害の回復には、専門家によるサポートを受け続けることが非常に重要です。心療内科や精神科での通院、臨床心理士などによるカウンセリングを継続することで、自分の状態を客観的に把握し、適切な治療を受けることができます。
とくに休職中は、症状の波が落ち着いたと思っても、環境への復帰時に再発リスクがあるため、治療を途中でやめず、医師と相談しながら療法を見直していくことが大切です。回復が進んでいる実感が持てない時期でも、専門家の助言は安心感につながり、着実な回復を支えてくれます。
自分一人でなんとかしようとせず、「治療は医師と伴走するもの」と考えて、安心できる場所を持ち続けていくのがおすすめです。
適応障害での休職までの流れ
「休職した方がいいのかもしれない」と感じたとき、どう行動すれば良いかわからず、戸惑ってしまう方も多いかもしれません。適応障害での休職は、ただ職場を離れるだけでなく、正しい手続きを踏むことが大切です。本項目では、休職に至るまでの基本的な流れをわかりやすく解説します。
- まずは病院を受診し、診断書を作成してもらう
- 会社に診断書を提出する
- 休職手続きを行う
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
まずは病院を受診し、診断書を作成してもらう
最初に行うべきことは、心療内科や精神科などの医療機関を受診することです。自分自身で「適応障害かもしれない」と思っていても、正式な診断がなければ会社に休職を申し出ることはできません。
診察の際には、現在の症状や困っていること、仕事との関係性などをできるだけ具体的に伝えましょう。医師が適応障害と診断すれば、休職のための診断書を作成してくれます。診断書には、休職が必要である旨や期間の目安が記載されるのが一般的です。
会社に診断書を提出する
診断書を受け取ったら、速やかに会社へ提出しましょう。このとき、どの部署や担当者に提出すべきかは、会社によって異なります。多くの場合は上司や人事部、産業医などが窓口となるため、社内の就業規則や休職制度のマニュアルを事前に確認しておくとスムーズです。
提出の際には、「医師から休職が必要と診断されました」と簡潔に伝えるだけで構いません。詳細な事情を話す必要はなく、体調を最優先に考えて行動しましょう。
休職手続きを行う
会社側に診断書を提出した後は、休職の申請手続きに進みます。ここで必要となる書類や対応は、勤務先によって異なります。多くの場合、休職願や申請書の提出、健康保険や傷病手当金の手続きなどが必要です。
不明な点があれば、人事や労務担当に相談しながら進めましょう。また、提出後も会社側から追加書類の依頼や確認が入ることがあるため、こまめに連絡が取れる体制を整えておくと安心です。
適応障害×休職に関するQ&A
適応障害による休職を考えたとき、制度や対応の仕方に不安を感じる方も多いはずです。ここでは、よくある疑問をQ&A形式で解説します。
- 適応障害での休職は労災認定される?
- 休職したい場合の職場への伝え方は?
- 適応障害で休職した場合、1ヶ月目の給料はどうなる?
- 適応障害での休職を延長したい場合は?
それぞれの疑問の答えを見ていきましょう。
適応障害での休職は労災認定される?
適応障害が仕事上の強いストレスやトラブル(例えば長時間労働、パワーハラスメントなど)によって発症したと認められる場合、労災認定される可能性があります。労災認定されれば、治療費や休業補償給付などが支給され、経済的な負担が軽減されます。
ただし、認定には「業務との因果関係」や「発症前の状況を証明できる資料」などが必要です。申請を検討している場合は、労働基準監督署や会社の労務担当、または産業医と相談しながら手続きを進めるのが安心です。
休職したい場合の職場への伝え方は?
休職を申し出る際は、体調が優れないことを簡潔に伝え、診断書がある旨を伝えれば十分です。
休職を申し出る際に、「どう切り出せばいいのか」と悩む方は多いでしょう。伝え方に正解はありませんが、「医師から休職が必要と診断されました」と事実を落ち着いて伝えることが大切です。無理に詳しく説明する必要はなく、体調を第一に考えた対応で問題ありません。
心配な場合は、まず人事部や信頼できる上司にメールなどで連絡し、「お時間をいただきたい」と相談するのも良いでしょう。
適応障害で休職した場合、1ヶ月目の給料はどうなる?
適応障害で休職を開始した月の給料は、会社の就業規則や給与体系により異なりますが、通常は欠勤扱いとなるため基本的に給与の支給はありません。
ただし、健康保険に加入している方であれば、4日以上連続して仕事を休んだ場合に「傷病手当金」の申請が可能です。これは、会社からの給与が出ない場合に、生活を補助するために支給される制度で、直近の標準報酬日額の3分の2相当が支給されます。
申請には医師の意見書や会社の証明が必要となるため、早めに人事部などに相談して手続きを確認しましょう。
適応障害での休職を延長したい場合は?
休職を延長したい場合は、医師の診断を受けたうえで、診断書を再提出し、上司に延長の意思を伝えましょう。
回復のペースは人それぞれであり、休職期間中に体調が思うように改善しないこともあります。その場合は無理をせず、まず主治医に現在の状態を相談しましょう。医師が休職の継続を必要と判断した場合、新たに診断書を作成してもらえます。
その診断書をもとに、会社へ休職延長を申し出ることが可能です。提出方法や延長の上限については、会社の就業規則や制度によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。焦らず、自分の心と体を守ることを優先しましょう。
適応障害にお悩みの方はみつだクリニックへご相談ください
「これ以上がんばれない」「仕事のことを考えると体が動かない」——そんなサインを感じている方は、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することが大切です。適応障害は、環境とのミスマッチによって心が限界を迎えてしまっている状態です。治療には休養と環境調整などの治療が必要であり、それには医師の適切な判断とサポートが欠かせません。
みつだクリニックでは、患者さま一人ひとりの状況に寄り添いながら、無理のない治療と回復を支援しています。カウンセリングや診療を通して、安心できる環境づくりのお手伝いをいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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まとめ
適応障害での休職は、決して「逃げ」ではありません。それはむしろ、自分の心と体を守るための勇気ある第一歩です。無理をして働き続けることで症状が悪化するリスクもあるため、休むことや、ストレスのある環境から距離を取ることが治療の中心になります。
大切なのは、無理をしないことです。今は「がんばる」よりも「しっかり休む」ことが必要なときかもしれません。
休職中は生活リズムの見直しや心のケアを意識しながら、自分自身と向き合う時間を大切にしてください。そして、必要なときは専門家のサポートを受けながら、少しずつ回復を目指していきましょう。この記事が、あなたの今後の選択の手助けとなれば幸いです。